「それがあなたよ」


俺は面食らった。


「どういうことですか?」


「やっぱりまだ分かってないのね。あなたにはとてつもない量の記憶が宿っていると話したじゃない」


そういえば……忘れてた。


「それじゃあ、悪魔が人の記憶を力に替えて災いをもたらしてきたとすると、大量の記憶を持った俺はかっこうのエネルギー補給源になる、とか?」


俺は恐る恐るそう聞いてみた。


「またまたビンゴッ。そうなの。あなたは悪魔にとって願っても無いゴチソウってわけよ」


「そ、それじゃあ、俺はいずれ悪魔に喰われる……?」


思わず声が小さくなってしまう。


「何も対策もせずにいれば、ね」


それは昨夜もアメリアから聞いてはいたが、半信半疑だった。第一にアメリアの言ってる事をまるで信じてなんかいなかったのだ。


しかし、アメリアの話す、作り話にしてはあまりにも精巧で、生々しく、その上先ほどの出来事が決定的だった。


俺の母親はアメリアの存在に気付かなかったのだ。


「でも心配しないで。そのために私がいるんだから」


アメリアはあからさまに顔を青くしていた俺に、そう珍しく優しい、そして力強い言葉を掛ける。


「それでね。……実は今も危機的状況にあるの」