「その災厄っていうのは……その、自然災害とか流行り病とかですか?」


俺は何気なくそう聞いてみる。


「分かってるじゃないの。正にその通りよ。どうして知ってるの?」


「まあ、昔の人はそういう不幸な出来事は何でも悪魔のせいにしてたりしたらしいですから」


よくドラマや映画、本、はたまた学校の歴史の教科書などに記載されている。大抵の人が知っているのではないだろうか。


「ふぅん、賢明な判断を下す人間もいるものね。感心したわ」


賢明かどうかは別として、俺は逸れ始めた話題を元のレールにアメリアを引き戻す。


「アメリアさん。話の続きは?」


「あっ、そうそう。危うくね。アナタも賢明ね」


俺はふざけて言うアメリアに、何も言わずに目で話しを促す。


「えっと、どこまで話したっけ?……あっ、それで悪魔が引き起こす大抵の災厄は私達の世界にまでは波及しなかったから、ある時を除いては見逃してきたわ」


その瞬間、何かが妙に引っ掛かった。


「ちょっとストップです。俺達の世界で起きる災厄を見逃してきたって言いました?」


アメリアはアッと口を開けて、あからさまにまずかった、という顔をして見せた。


「いえ、その。もちろん人が無闇に命を奪われることはあってはいけないことではあるけど、その……悪魔にも人権というか、あっちにはあっちの主張があったから」


あからさまにしどろもどろになるアメリアはなんだか可笑しかった。


「色々とあるのよ」


それがまとめかよ!?


「自分たちの世界に影響が無ければ悪魔が人を喰おうが、病気を流行らせようが、手出しはして来なかったわけですね?」


俺はその言い方は余りに生々しいと思ったが、この際本音を話すことにする。


「正直言えばそうよ」


意外にもあっさりとそう認めてしまうアメリアはアメリアらしいと思ってしまう。


「で?そのアメリアさん達が見逃せない、ある時って言うのはどういう時なんですか?」