いた。


夢なんかじゃなかった。


アメリアが一ノ瀬家の和室のソファーに我が物顔で深々と腰を沈めている。


俺は仕方なく、再度和室の照明を点ける。


「どうしていきなり消えちゃったのかしら?」


俺はさぁ?としらばっくれる。


「まぁ良いわ。そこ座って」


アメリアは自分の正面、テーブル越しのその席をピッと指差す。


俺はどうしてあんたの命令に従わなくちゃならないんだと反論しようとするが……止めておく。


またさっきの調子で大声を出されたら今度こそ誰かが目を覚まして起きてきそうだ。


それにしても、家の人間はのん気だなとため息を吐く。一家の長男である俺が人生最大の珍事に巻き込まれているというのに。


「なによ?そのため息は?何か文句があるなら言いなさい。ただ……言った後に後悔しないことね」


アメリアは不敵な笑みを浮かべ、俺をジトッとした目つきで見据える。


ひどい。脅迫だ。魔女だ。


俺はふと、先ほどまでアメリアが握っていた黒の刃が消えていることに気付く。とんでもない禍々しさだった。思い出しただけで鳥肌が立つ。


最早立場は逆転していた。いや、アメリアが家に来たその時から既に俺は圧倒されっぱなしだ。


俺は仕方なく指示された席に腰を下ろす。