アメリアの余りにも強引で、ある意味無慈悲な言動に俺は半ば放心状態で玄関に立ち尽くしていた。


これは現実か?夢でも見てるんじゃあないか?あのアメリア・ナンチャラとかいう女は何だ?


真夜中過ぎのこんな時間になぜか玄関の鍵を開けて入って来たと思ったら、俺を無視して上がりこもうとするは、挙句の果てには俺の命が危ない?世界に関わる?


ホラ話も大概にしろっつうの。


この5分間の間に起きた出来事はこれまでの俺の人生の中で最もインパクトのあるものだった。


そして、ふと我に返る。


そしてこう思う。


俺は勉強の疲れで2階への階段を上る直前、つまりこの玄関で力尽き、立ったまま寝てしまっていたのではないかと。つまりは夢を見ていたのだと。よってあの忌々しいアメリアという女は俺の脳が作り出した架空の人物なんだと。


そうだ。そうに決まってる。どう考えたってまずあの格好がありえない。ハレンチ過ぎだ。


そう無理やり自分を強引に説得し、心を落ち着けるため、ふぅと軽く息を吐く。


「寝よう」


俺がそう言って、玄関脇、和室の戸のすぐ隣の照明スイッチを消した時だった。


「ちょ、ちょっと。何これ?どういうこと?電気が消えたわよ?早く点けなさいっ。こらぁ」


という、深夜にあるまじき大きな声でアメリアが怒鳴ったのと同時に避けられない現実と対面する羽目になった。


俺は素早く和室の戸を開き、アメリアをなだめようとする。


「アメリアさんっ、シーー。声でかいです」


俺は声を殺して、且つ奇妙な訪問者への怒りを若干込めていった。


「電気が消えちゃったから早く点けて」