このチャンスを逃せば確実に殺されると確信した俺は弁明を始めた。だが、両手で作った壁は恐怖で解けない。


「ホント押し倒してすいませんでしたっ。ただいきなり見ず知らずのあなたが土足で家に入ろうとするから、止めた訳で。決してセクハラをするつもりなんか無くて。もしかしてうちの親のどっちかの知り合いですか?だとしたらホントすいません、すいません、すいま…………まあ確かに見ず知らずの女性にセクハラする男なんてのは悪魔ですが、僕は全然そんなつもりは無くてですね……」


言い終わらない内にくい気味で女は俺の一世一代の弁明を中断させた。


「だー。もう、うるっさい。黙んなさいっ」


俺は冷静にもアンタが質問してきたんだろっと突っ込む。勿論心の中でだ。


「アンタ、本当に人間?うーん、悪魔がこれほど饒舌になれる訳も無いし、ましてやこんなプライドが無いような平謝りで命乞いするはずもない……でもどうして私の姿が見えるわけ?うーん」


女は構えを解き、相当に悩んでいる様子だ。俺は一先ず危機を脱したことに胸を撫で下ろす。


「あのー、ちょっといいですか?」


女は何よ?とまだ俺への警戒心を解いていない口調で言った。


「えーと、お姉さまは一体どちら様ですか?」


女の機嫌を取るべく何故かお姉さまと呼んでしまった。言った自分が恥ずかしくなる。それは女も同じだったようだ。


「お姉さま!?ちょっと止めて。私はアメリア・フェミリア」


意外にも女は、アメリアは名前を教えてくれた。


「そのー、アメリアさんは一体?」


と質問を繰り返す。