イチゴ・オレは薫の手に握られたまま。 力が入っているのか、両サイドがペコッと凹んでいる。 「ねぇ、菜摘。 飲もう、イチゴ・オレ。温くなっちゃうよ!」 不意に顔を上げた薫に、私はジュースを勧めた。 一口でも飲んで、気持ちを落ち着かせてほしかったから。 コクンと頷いた薫は、ゆっくりとだけど、ストローを穴に差し込み、口に含んだ。 「……おいしい」 微かに笑った。 「よかった」