夜道バイト帰りに歩いていたら、血の後が付いたバスの停留所を知らせるポールを見つけた。


血は新しい方で鮮血とは言いがたいが触ってみたところ、ドロっとした感触が分かる。

「何か事件が起こったのか・・・」と考えた私はその場に座り込みその凶器になったであろうポールをギュッと握った。


「・・・痛っ!もう、ちょっと休憩してるんだから触るなよ!」

















ポールが喋った。


私はまがい物には興味はないのだが、何がどういうロジックでポールが喋れるのかが気になるので私はポールに話しかけてみることにした。

「ぷっ・・・クク・・・なんで、傷だらけであなた・・・そこのゴミ捨て場で休憩してんですか・・・」

笑いを堪えるのを必死だった。外国人のポールならまだしも、バス停のポールである。

流暢な日本語を喋るバス停のポールである。

俗世に対しての倒錯が激しいためか、私は一般人が驚く所を普通に笑ってしまった。

「まぁ笑うのも無理はないな、一介のバス停のポールがこんなことになってるんだ。まったく、迷惑な話だぜ。カップルに彫られたんだぜ?ここ、イテテ・・・」

ポールは傷口を僕に見せた。きれいにえぐられているのが分かる。

パックリ割れた傷には、「クニエ/ハヤト。いつまでも幸せにあれ」と書いてある。

まぁよくどこぞのバカップルがよくやるアレだ。大体幸せになれないアレだ。

「こんなこと桜坂でやってるだけかなーって思ったけど俺みたいなのにもするんだねーイタタタ」

ポールはベンチに腰掛けながらタバコを吸い出した。

「まぁ世の中はそんなバカで溢れてるんですから、仕方ないですね」