今日は朝から走ってばかりだ。

鬱蒼と生い茂る深い森の中。
木々の間をすり抜けつつ走り続けること、すでに1時間ほど。さすがに息があがってくる。

しかも背後からは火の塊やら氷の塊、弓矢に槍、ダガーとフルコースで飛びかかってくる始末。

「もーー!!いーかげんになんとかしよーよーっ」

あたしは飛びかかってくる火の塊やら槍やらを交わしながら、やはり同じようにそれらを交わして走る3人に叫んだ。

「言ってるヒマがあったらミーナ!お前がなんとかしろー!」
頭に巻いた綺麗なエメラルドグリーンのバンダナを片手で押さえながら器用にひょいひょいと背後から飛びかかってくるダガーなんかを交わしながらディシャナがわめく。

「あ~~。2人ともケンカしてるヒマがありましたら、この辺りで片付けてしまいましょう~」
両手を胸の前で組み合わせたまま、おっとりとロムがあたしとディシャナを窘(たしな)める。

「ロムの言う通りだ!このままじゃラチがあかないぞ!」
背中に挿した白銀の長剣を引き抜いて叫ぶと、踵(きびす)を返してウェイナが駆ける脚を止めた。

「確かにね!」
「ま、異存はねーや!」
ウェイナの声に応えて、あたしとディシャナも脚を止める。

「あ~。今日のお客人はかなり多めですね~」

ゆったりと脚を止めるロムの間延びした声に弾かれるように顔を上げた。
「…ホント…満員御礼ね」

生い茂る木々の合間には何十人もの人間、エルフ、ドワーフやらたち。手に手に武器を携えこちらをニタニタと睨(ね)めている。

少し息を呑み、あたしは傍らの3人に視線を投げる。

ウェイナがしっかりと頷く。

ロムがにこりと柔らかく微笑う。

ディシャナが頭のバンダナを締め直して横顔でニヤリとする。


これはあたしたちの合図。

『闘え』