放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め

「うおー!!!!!」

水平線に浮かび上がった大陸を見た瞬間の俺の絶叫だ。


とてつもなかった。

でかいのだ。大陸はでかいのだ。

島国とは明らかに違うその大きさに、俺はただ叫ぶしかなかった。

「これが!これが大陸というものなのかー!」

しかし、驚いてばかりはいられない。俺は船長なのだ。
船長として指示を出さなければいけない。

俺は大声で言った。

「そ、総員、直ちに上陸の、じゅ、準備をせよ!現在、上陸地点の、安全は、確認されては、いない、各員…」

やられていたのかもしれない。
大陸のでかさに飲み込まれていたのかもしれない。

声は大きいが伝わらなかった。俺の指示では船は一つにまとまらなかった。


俺の様子を見かね、パソコンが囁いてくる。

「ぼっちゃ、いや、船長。堅苦しさは捨てましょう。船長のお言葉で伝えて下さるのが一番ですぜ」

俺は思わず苦笑した。まったくパソコンの心づかいには恐れ入る。
そうだ、俺の言葉で言えば良いのだ。
パソコンはいつも、俺が見失う大切なことを気付かせてくれる。

「大丈夫だ、よく見とけ!」

俺はパソコンにそう吐き捨てると、大きく息を吸い込み再び叫んだ。

「おい!野郎ども!夢にまで見た大陸だ!フリーダムだ!ヤンキーどものアタックは半端ないらしいぜ!生きて帰れると思うなよ!覚悟しろ!そして、覚悟したら、さあ…、ビッチどものピーチパイを拝みに行くぜ!」

俺が叫び終えるやいなや

「ウオー!!!!!!」

今度は船が揺れるような歓声があがった。

やみ終わらない歓声の渦の中、俺はやっと本当の船長になれた気がした。

パソコンはそんな俺を見つめている。

ただ優しく見つめている。