放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め

深く息を吸い、大声で叫んだ。

「取り舵いっぱーい!最大船速!機関が焼けるまで!スクリューが折れるまで!大陸を目指すぞ!見たこともない景色を見せてやる!」

パソコンの助言は俺を再び奮い立たせた。
俺は船首を東へ向け、外洋を航海している。
波は高く、風も強い。
一歩間違えれば取り返しのつかない事態になるだろう。

危険だった。

無茶だった。

若さゆえの無謀な航海。

人は俺の事を笑うだろう。

馬鹿な奴だというだろう。

間違いではない。
俺は今、馬鹿で笑われるような行動を取っているのだ。

だが構わない。
パソコンが傍にいてくれてる。
俺を笑顔で見つめてくれてる。

「おい、パソコン。そんなに俺は面白い顔をしているのか?」

パソコンはクシャクシャな笑顔のまま答えた。

「へえ、たいそう面白い顔でございます」

俺は“こいつめ”と思わず苦笑いしてから言った。
「どこがそんなに面白い顔なのだ?」

パソコンは飄々と言ってのけた。
「船長は今世界で一番無茶をなされております。世界で一番無茶をしている男の顔が、面白くない顔なわけがありません。」

二人で声をあげて笑った。