放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め

熊田先輩はこの学校で唯一尊敬できる先輩だったんだよね。
柔道部に入部したのも、熊田先輩がいたからに他ならないし。
そう、特別。熊田先輩は俺にとって特別な存在だったんだ。

柔道を始めたのは9歳からだった。父親も昔やってたってことで町の道場に通い始めたのさ。
師範が元オリンピック候補とやらで、県内の強い奴らが通うような道場。
けど自由な指導がモットーらしく、師範は好きなように練習させてくれた。
俺は大人に交じってやるのが好きだったの。
だから俺にとって柔道の練習ってのは、大人相手にぶん投げられるってイメージしかなかった。

大人とやるとね、気が付かないうちに一回転してる。もう、いつ投げられたかわからないくらい。
宙を舞ったあとに、可笑しくなってくるんだよね。
で、頼むんだ。もう一本投げてくれって。
うん、そうだな、投げられに道場に通ってたんだな。小さい頃の俺は。