放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め

湯槽につかり、考えてみる。
「突破口はどこか?」

湯槽につかりながらだろうが、チャリンコに乗りながらだろうが、浮かばないものは浮かばない。
どうすれば良いのかわからない。
とにかく亜希は感じてない。

今日で10回目ですよ、そろそろ本格的にやばいです〜。
振られちゃいます〜。
捨てられちゃいます〜。

だ…。

まあ、亜希みたいな綺麗な娘と付き合えて、プレイ出来ただけでもラッキーなんだけどさ。しかも、もう10回もしたし。
これで終わりだとしても、損はしてないな。
なんて自分を慰めつつも、やっぱ別れるのはきついわけで。
だって俺みたいに、柔道しか取り柄のない16歳が、あんな綺麗な娘と普通付き合えないもんね。
内緒にしてるけど、クラスの奴らが、亜希と俺が付き合ってるの知ったらたぶん腰抜かすし。
腰抜かしたあと
「もうやった?」
「どんなだった?」
と聞かれるのも鉄板。

だからクラスの奴には、亜希と付き合ってることは言ってないけどさ、でもやっぱり誰かに相談したい時もあるよな…。
悩みはさ、抱え込んじゃダメなわけよ。
潰れそうだよ。
俺のハートは潰れてしまいそうだよ。

やっぱ言葉にしなくちゃね。
辛いことは胸にしまっておくとふくらむからさ、言葉にするだけで楽になりそうな気がする。
穴を掘って、王さまの耳はロバの耳〜って叫ぶやつだな。

そうだな、ここは風呂。
穴はないがお湯はあるじゃん。
気が付いた俺はやっぱ賢い。
俺は口まで沈み、大声で叫んでみる。

「ボボボッ、ボコボコッ、ボボボゴッ!」
(亜希が全然感じな〜い!)

鼻にお湯が入った…。

ダメだ、お湯に言ってもダメだ。
人に言わなくちゃ…。

ほんと…、前だったらすぐにでも熊田先輩に相談したのにな。
熊田先輩に嫌われている今、あらためてその存在のでかさが身に染みるわけで…。