放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め

“押されてるかも…”

そう思ったね。

ここまでの2人の会話は、どうみても亜希が優勢。
主導権、取られっぱなしだったからね。

亜希は場慣れしてる感じだったし。

状況を立て直さなくちゃって思った。

だから俺は罵ってやったんだ。

俺は俺を罵って奮い立たせようとしたよ。

“おい!俺!このまま舐められっぱなしかい?こんなんじゃ、男がすたるぞ!見せてみろ!お前の本当の力を見せてみろ!”ってさ。

亜希から“こいつただ者じゃないわね”って思われるように、なんとか一発ガツンとかましてやりたかったんだ。

色々考えてみたが、やっぱりキーワードは“大人の男”以外ないなって思った。

遠山くんいわく、“年上の男とヤリヤリ”の亜希みたいな娘は、大人な男を欲してるんだろ?ってね。

だから、見せてやろうと思ったよ。
他の奴らには出来ない、大人の会話ってやつを見せてやろうってさ。


「う〜んと?あれかな?着メロとかは、何にしてるの?」


田村正和っぽく聞いてやったさ。
俺、オーラでまくってた!

なんて言うのかな?
あえて、この質問だったね。
一見普通の質問ぽいけどさ、そこには大人の男としての、しっかりとした計算があったんだな。

これは亜希が俺に聞いてきた質問だったんだよね。

俺はピンときた。

人に聞くことなんてさ、たぶん自分も聞かれたいことなんだって。

さすが大人の男。

こういうとこに気が回る俺は最高!

こういう場面で大切なのはさ、自分について語るんじゃないよね。
むしろ相手の話しを聞くという姿勢が求められるわけだ。

だからこの質問だったんだよね。

出来ないね、普通の16歳には出来ない。

もうね、これで決まったかなって。

俺の大人のトークで、亜希のハートはグラグラきてるって思ったね。