放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め

「母ちゃん飯〜」
玄関開けていつも通りの第一声。
キッチンの方からは「ただいまでしょ!」って母親の声が聞こえる。うん、日本の挨拶的にはあの人の言い分が正しい。
「うん、ただいま。母ちゃん飯。」
呟きつつ俺はリビングに入りテーブルにつく。
「遅かったわね、部活?遊び?遅くなっても良いから電話なりメールなりしなさいよ、何のために携帯もってるの?ご飯はすぐ出来るから、先にお弁当箱を出しなさい」
母親はキッチンから顔を出して言う。すげー早口。
「うん、遅くなってごめんなさい。今日は付き合ってる彼女の家に行って来たんだよ。なんてったって彼女の両親とも帰りが遅くてイチャイチャできる日だからね。やっぱイチャイチャしたいし、俺にとっては初めての彼女だし。でね、まあ今日もしたわけなんだけどさ、するよね、したい盛りなわけだし。したんだよ、セクシャルなプレイを。でもさ、やっぱダメなわけ。頑張ったんだけど彼女は感じてくれないんだ。たっぷり時間もかけたし、この年頃にありがちな自分本位なプレイではなかったはずなんだけどね、感じてくれないんだよね、彼女。だから今日のプレイを肉体的な側面から振り返るならば、俺だけが満足しているかのような形だったんだ。でもさ、俺は彼女を感じさせられなかったという事に、不完全な想いを抱いているわけだから、やっぱり俺も決して満足したとは言えないと思うんだよね。なんかさ、切ないよ。やりきれない気持ちでいっぱいだよ。うん、ほんとはもっと早く家に着けるはずだったんだ。余裕をもってプレイは進めたし。彼女の家を出たのも遅くはなかったし。けど帰り道、気になっちゃってね、なんで彼女は感じてくれないんだろうって。気になりだしたら止まらなくてね、だから考えてたんだ。自転車に乗ってね、考えてたの。もう、グルグルグルグル公園の周りをまわって、で、頭の中もグルグルグルグル。だからこんな時間になっちゃったんだ。お母さん、帰宅時間が遅くなってごめんなさい。次からは、彼女の家からの帰り道に、公園の周りをグルグルまわるのはやめるよ」
って言ったら、高1の息子を持つ母親的には結構ショックだろうと思ったので、
「友達と遊んでた、次から遅くなる時はメールするわ」
とだけ言って、弁当箱をカバンから取り出す。
気のきく息子だ。母はさぞ幸せだろうな、うん。

「でさ、今日、飯なに?」