放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め

6月頭に個人戦の大会があった。
俺はいいところまで勝ち上がったが、やっぱり寝技でやられて、全国大会には進めなかったんだよね。

熊田先輩も、あと少しのとこで負けてた。
猛者どもがひしめく重量級だから、熊田先輩クラスでも組み合わせいかんによっては厳しい。
試合の帰り、熊田先輩の目、真っ赤だったし、たぶん相当悔しかったんだと思う。

主将は善戦して上の方まで行ったが、結局県大会突破はならなかった。
でも自信がついたみたいだった。
“団体戦が楽しみだ”って言ってたし。


それぞれがそれぞれの思いを抱えてる。

そして夏の大会はやってくる。

主将と熊田先輩にとっては最後の大会。

今度の大会は、俺個人の力試しとは違う。
尊敬する先輩達の足を引っ張るわけにはいかない。

そう思うと練習にも熱がこもった。

2年生も熱心に俺に寝技の相手をしてくれる。
大会のメンバーに入ってる人も、メンバーからもれた人も、誰もが“次は俺とやろう”と寝技の稽古をつけてくれる。

2年生も知ってるんだ。
主将と熊田先輩の胸に秘めた思いを。

“全国大会”

弱小柔道部だから恥ずかしくて口には出さないが、誰もがその言葉を思い浮べてた。

主将と熊田先輩は、相変わらず2人で乱取りをしてる。
汗だくになりながら、休むことなくひたすら。

2人とも胸元辺りが内出血して、鮮やかに染まってる。
誰も声を掛けれない。


大会まで2週間。
初めて我が柔道部は一つになってる。

あとは熊田先輩と俺の関係だけだ…。