すっかりと陽も暮れ、月が顔を出した頃、あるレストランに団体客がやって来た。
団体の中の1人、赤髪に頬に痣のあるごつい体をした男が店に入るなり近くの椅子を蹴り飛ばし叫ぶ。
「シェリル・アークって奴はどいつだ!?」
男の声に店全体の目が一斉に向けられる。
皆迷惑そうな顔をし、関わりたくないと席を立つ者や何が起こるのかと楽しみに待て者もいた。
そんな中、近くにいた客が男に脅えながらある人物を指を差す。
そちらへと目を向けると、そこには肩までの濃い紫のボブヘアーの少女が机をふきあげていた。
「おぅおぅおぅおぅ。あんたかこの間ウチの奴をやったって言うのは」
「……」
少女へと近づき見下ろしながらそう言うが、少女は何の反応もなく机の後片付けを続ける。
「落とし前はちゃんとつけてもらわねぇとな………」
反応のない事に苛立ちを覚えながら指の骨を鳴らし、男は拳を振り下ろす。
だが…
「なっ!」
振り下ろした拳は空を切り、目の前にあったはずの少女の姿はいつの間にか男の背後に移動していた。
「ここで暴れてもらっては困ります。話なら表で聞きますよ。」
「生意気な……まぁいいだろう。ここじゃあ目一杯暴れられねぇからな!」
少女は冷静にそう言うと店を出る。
男は少女の後ろ姿を睨みながら子分であろう人物を連れて表へ出るのだった。

