斧が風を切る音がした…
狂ったような叫び声が止む…
嫌な静けさが辺りを覆い尽くす…
斧が振り下ろされる瞬間目を反らしたリョーガは、背けていた顔をジゼルへと戻す。
血に染まるその光景なんか見たくない…
だけど、このままずっと逃げる訳には行かない…
悲しそうに眉を下げながらゆっくりジゼルへと向けた視線。
だがその表情は一瞬にして驚きへと変わった。
何故なら、振り下ろされた斧の刃は、ロゼッタの首ギリギリの所で止まり、微かな傷をつけただけだったからである。
「……ば、化け物…………化け物……!」
冷や汗を額に浮かべながらロゼッタは叫ぶと呪文を唱え姿を消した。
斧を振り下ろした状態で固まったジゼルは、ロゼッタの姿が消えるとその手から斧を落とし、崩れるように地に倒れた。
「ジゼ!」
何が起きたのかはわからないが、ジゼルの無事を確かめるべく駆け寄るリョーガ。
ヴェルディとコウガも歩み寄る。
「…何が起きたんだろうね……」
「そうだな……」
何事もなかったようにスヤスヤと眠るジゼルを見下ろし、ヴェルディとコウガは不安そうに眉を潜めるのだった。

