「てっめぇ!」
リョーガは気を失ったジゼルを見て怒りを露わに地を蹴ると、猛スピードでロゼッタとの距離を縮めて行く。
「邪魔するんじゃないよ!魔法もろくに使えない糞ガキがっ!」
走り寄って来るリョーガに毒を吐きながら鞭を地面に叩きつけた。
すると地響きと共に地は揺れ、リョーガの元へと亀裂が走る。
「なっ………」
スピードに乗っていた為急に止まる事のできないリョーガはこのままではまずいと何とか思考を巡らせる。
だがそれも間に合わず、真っ二つに裂けた闇の穴へと真っ正面から突っ込んで行く。
もう駄目だと諦め目を瞑った瞬間…
「……ん?」
背の服をつままれたような違和感と頬に受けた風を不思議に思ったリョーガは恐る恐る瞑っていた瞳を開く。
ゆっくりと現れた銀色の瞳に映ったのは、自分を見上げるロゼッタの姿。
地から足は離れ宙に浮くリョーガは何事だと背後を振り返ると、茶色い鳥が自分の襟を嘴にくわえ羽ばたいていた。
「この鳥……コウ兄!」
鋭く睨む巨大な鳥を目にし、思い出したようにそう叫ぶと地上のコウガへと振り返る。
名を呼ばれたコウガは柔らかく微笑み、緊張感もないのかのほほんと手を振っていた。
「逃がさないよ!」
頼りなげなコウガを目に苦笑いを浮かべるリョーガ。
攻撃を交わされたロゼッタは悔しそうに鞭を握りしめながら宙を舞うリョーガへと再び攻撃を仕掛ける。
大きく前へ踏み込み力強く鞭を振るうロゼッタ。
だが…
「……なっ!いつの間に……!」
黒い鞭は重みを増し、冷気が立ち上って来る。
動かなくなった鞭を見下ろすと、黒かった鞭は光に反射し輝いており、カチカチに固まってしまっていた。

