「やっと起きたか。」
ジゼルがリビングに戻って数分の後、寝癖のついた頭のままリョーガがやって来た。
大きな欠伸をしながらリビングの入り口に立つリョーガを見ると、鏡の前でネクタイを締めながら呟くヴェルディ。
ティーカップを手にしていたジゼルはリョーガを見るなり、カップを落としそうになりながらすぐさま目を反らす。
「あれ?顔赤いけどどうかした?リョーちゃん?」
「んでもねぇよ!」
スーツを着てプラチナブロンドの髪を緩く1つに結ったジゼルを見ると、いつもとは違いどこか大人っぽさを感じ微かに頬を染めたリョーガ。
それに気づいたコウガは笑いながらリョーガの顔を覗き込む。
自分の顔を覗き込み悪戯な笑みを浮かべるコウガにリョーガは舌を出しそっぽを向くのだった。
「リョーガ」
「あ?……っと………」
3人に背を向けたリョーガはヴェルディに名を呼ばれ振り返ると、ヴェルディが何かを投げて来た。
自分に向かって飛んで来るそれを何とかキャッチすると、
「何だよ、これ?」
リョーガの手の中には、シワ1つない黒いスーツに白いワイシャツ、黒のネクタイに新品同様の革靴が。
「いいから早く着替えて来い。」
「わかったよ。……ったく相変わらず兄貴は人使い荒ぇんだからよ……」
嫌そうに眉を潜めるリョーガに、ネクタイを締め終えたヴェルディはそう言うと上着を羽織る。
リョーガは何かボソボソと呟いていたが、コウガに背を押され部屋へと着替えに戻るのだった。

