Silent Song

途中、ホストクラブのキャッチとか、若いコなら誰でもいいって気持ちがダダ漏れのおっさんに声かけられたけど、そんなん無視。

少し足を速めて進んでいると、横断歩道に差し掛かった。
終電、とっくに終わっちゃってるから、どっかでタクシー拾おう。
明日も早いし。

 信号が青だったからそのまま進む。

突然けたたましいクラクションが夜の空気を引き裂いた。

えっ、何?

びっくりして振り向くとあたしのすぐ近くに黒い車体が迫っていた。


 凄まじい衝撃と身体をバラバラにされそうな痛みを感じた瞬間、あたしは暗闇に意識を呑まれた。
幸せの夜から一気に悪夢の夜へ。

 この日あたしは、あたしにとって一番必要なものを失った。

いちばんだいじな、“聴力”を。


十九歳の、夏の終わり。