―― 支払いを渡良瀬に頼む。


「700円でございます。」

「んっ。・・・安くない?」

「母が700円でって言ってましたから。」





僕は渡良瀬の母親を見た。母親が近づいて来た。


「夏恋の先生なんですってね。
 娘がいつもお世話になっております。
 先生からお金とってごめんなさい。」





大きく、くっきり二重のイキイキとした輝く目。

小さく、ほんの少し厚めでポッテリとした口唇。

挨拶もきちんとしていて、清楚な笑顔。

生徒の母親なのに、生徒の母親だからずっと年上だろうに、
可愛らしい人だと思ってしまった。




僕がお金を払うと、


「ルミちゃん、大丈夫?」

「――あっ、僕が送って行きますから。」


僕は急にこの人の前で、誠実な教師を演じたくなった・・・。