【短】特等席


彼の言葉に、美佐子を見る彼の目に、なんだかものすごく……“愛”を感じた。


美佐子が彼のことをどう思っているのか、なんてよくわからないけど。

彼が美佐子のことを“ただの幼なじみ”だと思っていないことは確かだ。


ドキドキしていたあたしの胸はドクン、ドクンと大きく脈打ちはじめた。


なんだか見てはいけないものを見てしまったような、そんな感覚。


“きっと彼は、自分の気持ちを隠して美佐子と一緒にいるんだ”


あたしの中ではそんな考えが膨らんでいって、彼に対するときめきは、あっという間に消えてしまった。


この日からあたしと彼は友だちになった。


彼はあたしを、

“美佐子の友だち”

として見ているし、あたしだって彼を、

“美佐子の幼なじみ”

として見ている。


ずっとずっと、その考えは変わらないんだと、思ってた。