【短】特等席


「用は済んだ。クラス戻っていいよ」

そう言ってサッサと自分の席に戻っていった美佐子。

「はぁっ!?なんだよ、ムカつく!」

なんて美佐子を睨みつける彼。

「あ…、あの…。ご、ごめんなさい…」

美佐子の代わりに謝ると、

「あー…。いや、こっちこそ…」

軽く頭を下げた彼が、

「あ…。え、っと…。名前は…?」

申し訳なさそうに聞いてきた。

「さ、…咲季」

「サキ…ちゃんね。よろしく」

くりくりの目を細めて笑う彼に、あたしの胸は素直に反応した。


か、かっ…かわいい…。


ひとりで勝手にドキドキしていたあたしに、彼は言った。


「気は強いけど、悪いヤツじゃないから。
……あいつと、仲良くしてやってくれる?」


「………。あ、はい」

慌ててコクンと頷くと、彼はニッコリ笑顔を見せる。

そして、美佐子に向かって、

「バ~カ」

と言うと、逃げるように教室から出ていった。