【短】特等席


「これ、大和。あたしの幼なじみ。“ヤマト”って呼び捨てにしちゃっていいからね」

彼を紹介されたのは、入学式の日からしばらくたったある日のこと。


「いつも一緒にいる子、彼氏?」

登下校のときに美佐子を自転車の後ろに乗せて走る“彼”について、何気なく聞いたことがきっかけだった。

「ちっ…違う!やだ、勘違いしないでよ!」

美佐子は思いっきり否定したあと、隣の、そのまた隣のクラスから彼を引っ張ってきたのだ。


「『これ』ってなんだよ!人をモノみたいに言うな。失礼なヤツだな」

肩におかれていた手を振り払うと、ムスッとした表情を作る彼。


初めて彼の顔を間近で見たけど、

わぁ…。
目、くりくりだぁ。


“男の子のくせに、なんて可愛らしい子なんだろう”って、感動してしまった。