【短】特等席


「なにしてんの?」

不思議そうな彼の表情に、破裂寸前の心臓が反応する。

こんな状況でも、ときめいてしまうものなんだ。


「えっ、…あ、……えっと…」

「ん?」

「あのぉー…」


“なんでもない”と言ってしまったら、今までと同じ。


「大和は、今日…バイトがあって、…駅まで行くんでしょう…?」

「うん」

「美佐子は…居残りさせられてるし…」

「はぁ?…ったく、なにやってんだ、あいつは」

「……」


今のままじゃダメだって思ったの。

変わりたいって思ったの。


「だから…」


いつも美佐子がいた。

彼のうしろ。


「……乗せて…」


もう、ガマンしない。

意地を張らない。


「駅まで……乗せていって…ほしい…」


美佐子の指定席だったその場所に、あたしは、ずっとずっと座りたかった。