【短】特等席


「じゃあね~」

「バイバーイ」

「また明日~っ」

そんな言葉たちが飛び交う中、あたしはひとり、体の震えと闘っていた。


今日、彼のうしろは“空席”決定。


「おまえ、居残りね」

美佐子があたしのプリントを丸写ししたのが、何故か先生にバレてしまって。

先生の雑用を手伝わされるのだとか。


だから……。


「ふぅーっ…。ふぅーっ…」

緊張してるの。


今日は、彼のうしろが空いているから。



「あれっ?…咲季?」

自転車をおして駐輪場から出てきた彼に声をかけられ、あたしの心臓がドクンと飛び跳ねる。

深呼吸して体の震えを止めようとしていたあたしは、

「…ひっ……」

思いっきり吸い込んだ空気を、吐き出すことなくそのままゴクンとのみ込んだ。