【短】特等席


彼も、美佐子も、今までとはどこか違う。


お互いに、適度な距離を保とうとしてる。


そんな気がした。


美佐子に会いに、毎日この教室へやって来てた彼が、最近は、用がないかぎり顔を出さなくなった。

美佐子も美佐子で、彼のこぐ自転車の後ろに乗る回数を、極端に減らしていた。


ふたりの間に何があったのか。


「美佐子とケンカでもした?」

「大和と、なんかあった?」

気にはなるけれど、聞かないことにしてる。


聞けないんじゃなくて、聞かないことにしてるの。

知らないほうがいいことだってある。


あたしは、自分の気持ちを大切にしてればいい。


彼が美佐子のことを好きでいても。

万が一、美佐子が彼のことを“ただの幼なじみ”と思えなくなっていたとしても。


もう、迷わない。

あたしは、彼のことが好き。



大好きなの。