【短】特等席


「早くしないと…。時間ないよ?」

まだ半分も写しきれていない美佐子のプリントを指さしたあたし。

それを照れ隠しと受け取ったのか、美佐子はイタズラな笑みを浮かべながらプリントへと視線を落とした。


「あ、そうだ。これ」

ここへやってきた目的を思い出した彼が、美佐子に教科書を差し出す。

「あぁ、ごめん。授業終わったら返しに行く」

視線は手元に置いたまま、右手でペンを走らせ、左手で教科書を受け取った美佐子。

「あー…。いいや、今日は使わないし。
帰りに机ん中に放り込んでくれればいいから」

空いた手をズボンのポケットに突っ込んだ彼。

「んー。わかった」


ふたりの会話を、あたしは火照った顔をノートで扇ぎながら聞いていた。