【短】特等席


「サ~キ~っ!おっはよー……ぅ」

「はよーッス……」

後ろから聞こえてきた声は、あっという間にあたしを追い抜いていく。

「あ。おはよー…」


長い休みが終わり、また彼の、

“はよーッス”

の言葉を、毎朝聞けるようになった。


赤みをおびた茶色い髪。

日に焼けて、前よりも黒くなった肌。

風を含んで膨らむ白いシャツ。


彼のうしろ姿を見つめ、彼のすべてにときめいてしまう朝。

今もまだ、彼のうしろでケラケラ笑う美佐子に、嫉妬してしまう朝。


やっぱりあたしは、彼のことが大好きで。

彼が美佐子のことを好きでいても、彼のことを簡単にはあきらめられないのだと知った。



変わりたい。

変わりたい。

いつまでも、ウジウジなんてしていられない。


あの日。

傷ついた美佐子の手を引き、ゆっくりと歩く彼の姿を目にした日。

あたしは、心の底からそう思ったんだ。