【短】特等席


「……ふたりは、ただの幼なじみだよ」

ゆっくりと口を開いたあたしの横顔に、友だちの視線が向けられたのがわかった。


まるで、自分自身に言い聞かせてるみたい。


《ふたりは、ただの幼なじみ》


そうであって欲しいと願う、あたしの心の声だ。


「…ふぅん」

あたしの言葉を、友だちがどう思ったのかちょっぴり気にはなるけど。

「もし、大和が美佐子のことを好きだったとしたら、ね…。
もっと早くに告白してると思うよ」

告白するという行為が、簡単でないことはよくわかってる。

けど…。

口にせずにはいられなかった。


ジリジリと照りつける太陽の熱が肌を突き刺す。


「そっかぁ~。それもそうだよねぇ~」

うんうんと頷きながら友だちが言った言葉が、胸を突き刺す。


「そうだよ…。きっとそう…」

あたしはそう言ったあと、小さく深呼吸をした。