「美佐子!これ書いたのおまえだろーっ!」
隣のクラスの彼が血相を変えてやってきた。
あまりに勢いよく教室に飛び込んできたものだから、あたしはびっくりして体を小さくした。
「気づくの遅いよ」
美佐子はしれっとした表情してるけど。
赤みをおびた茶色いふわふわの髪の毛に指を突っ込むと、ガシガシと頭を掻き、
「あーっ、もーっ!おまえってホント勝手なヤツだな」
呆れた、って付け足した彼の手には夏期講習の申込用紙が握られていた。
美佐子は、
「そんなことでいちいち騒ぐな!いつものこと、いつものこと」
なんて言って彼の手から申込用紙を取りあげる。
そして、指で用紙のシワをのばすと、
「あたしが受けるんだから、あんたも受けるの」
と言ってニンマリ笑った。