【短】特等席


口に出さなきゃ想いは伝わらない。


そんなのわかってる。


わかってるけど、どうしても言えないんだ。


今のあたしには、彼に、“好き”と伝える勇気はない。



「あの一年、大和くんに告白したんだって」

ジリジリと照りつける太陽を背に、数日後にやってくる夏休みを話題にしながら学校を目指していたときだった。

友だちが、

「はよッス…」

と、いつものようにあたしを追い抜いていった彼の背中を見つめながら言った。

「う…そ……」

胸の奥をギュッと握りつぶされたみたい。

痛いのと苦しいのとで、手は、自然とシャツの胸元を握りしめていた。


「実はさ、あの子の友だちが、うちの妹と知り合いだったみたいで…」

友だちが、告白までのいきさつを話している間、あたしの心臓はものすごいスピードで動いていた。