「咲季も受けるでしょ?受けるよねっ?」

駅から学校までの道のりを、やっとの思いで歩いてきたあたしとは逆に、彼のこぐ自転車の後ろに乗ってきた彼女。

教室に足を踏み入れたあたしに気づき、暑さを感じさせないくらい爽やかな笑顔をして駆け寄ってきた。


「夏期講習?う~ん…。どうしよっかなぁ…。美佐子は?受けるの?」

ヒラヒラと、美佐子が揺らす一枚の紙に視線を移した。

「わ、わっ…。ちょっと…っ。なにっ?」

突然あたしを教室の隅に追いやると、

「総一郎がね、受けるらしいんだ」

耳元でコソコソと話す美佐子。

「そうなんだ…」

“総一郎”とは、美佐子が想いを寄せる人。

「咲季も一緒に受けようよ!ねっ?」

目をキラキラと輝かせて言う美佐子に、

「やだよ~」

なんて言ってもムダ。

「…仕方ないなぁ」

そう言おうとしたときだった。