【短】特等席


ゆっくりと振り向いた美佐子が、

「じゃあ、あたし、どうすればいい?」

ちょっぴり悲しげな目をして言った。


美佐子のことを傷つけたかったわけじゃない。

かといって、その1年生のために言ったわけでもない。


「……少し、大和のこと…自由にしてあげても…いいんじゃないかな、って…。
ほら、登下校のときとかさ、1年に声かけさせてあげられるように…」


多分、彼のためでもなく。


結局は、自分のため。


美佐子のおかげで、彼と出会えたのに。

美佐子がいつも彼といてくれるから、あたしは彼と仲良くなることができたのに。


そんなこと、ぜんぶ忘れちゃってた。


“ただの幼なじみ”なのに、毎日、毎日、彼の自転車の後ろに乗ってる美佐子がうらやましくて。

嫉妬してた。


あたしもその場所に、座りたいんだよ、って。


いつも思ってた。


あたしって、サイテー。