【短】特等席


「ねぇ、美佐子…」

「んー?」

新たに手にしたペンを試し書きしていた美佐子。


「知ってた?……大和のこと好きだって言う子、結構いるんだよ」

その言葉を聞いて、まん丸な目であたしを見た。

「げっ!マジ!?…うっそだ~っ」

「嘘じゃないよ…」

驚いたせいで手についてしまった青色のインクを、指でこすり落としながら美佐子が言った。


「あんな女々しいヤツのどこがいいわけ?」


…女々しい?

大和が?

……だとしたら、それは…。


「……それは」


本当はこんなこと、言うつもりなかったのに。

あたし、どうかしてた。


「…それは、きっと…。美佐子のせいだよ」


全く意味がわからない、といった表情をして首を傾げた美佐子に、

「美佐子が、そうさせちゃってるんだよ」

と、言ってしまった。