【短】特等席


「……」

「ほら、な・ま・え!」

シャープペンシルを握りしめたまま動きを止めたあたしの腕を、ツンツンとつつく美佐子。


《大和のことはどーでもいいから!》


どうでもいいなんて言わないでよ。

そんな言い方したら、大和がかわいそうだよ。


「ん…」

納得がいかないながらも、重たく感じる腕を動かす。

「2年、3組……」

美佐子が、あたしの書く文字を読み上げていく。


《大和のことはどーでもいいから!》

その言葉が頭から離れない。


毎日のように、美佐子に振り回される彼を見てきたし、彼に対しての愚痴を聞かされて、慣れっこになってた。


……はずなのに。


彼に対する美佐子の態度が、今日はやけに気にかかる。


胸が、ムカムカする。

イライラしてしまう。