「・・・・・・家族か・・・。」


 リンを連れて歩きながら思った。


「ん?どうかしたか?」


「いや、なんでもない。それより、厚着を買うぞ。ライスとは寒いからな。」


 グストのカバンには、元より厚着が入ってるが、さすがに子供用はない。


 リンの分を買い、それから、一週間分の携帯食料を買い込む。


「それ、まずいぞ!」


 リンが文句を言うが・・・


「日持ちはするし、火が使えないところでも食えるから、旅には一番適してるんだ。」


 と、一応説明してあげた。


 そりゃ、グストだって、魚や肉がどこでも取れるというなら、そっちの方が良いが、そんな甘いものではない。


 いざというときに備え、食べられるものを用意するのは必要なことだ。


「なぁ、聞いたか?ドーラの噂。」


 ふらりと、市場での会話が耳に入った。


 ドーラの噂。


 ・・・・・・そうか・・・とうとうバレタか・・・バカスの殺人事件が・・・。


 はやり、早くこの街を出るべきだな。


「あぁ、竜だろう?竜?しかも、とてつもなくでかいヤツ。」


 ・・・・・竜?


 市場の人たちの予想外の言葉に、ちょっとだけ拍子抜けする。