「残酷なヤツめ。」


「恵まれすぎなのよ。医療魔法が使える医者が、アイスラ国外にどれだけいると思ってるの?」


 確かに、魔法が使える医者というのは、よほどの優れた医者というコトだ。


 医療大国、アイスラは別として、他国になるとその数はぐんと減る。


 その理由としては、簡単に言うなら、名誉と血筋を守りたいということである。


 他国に出てしまえば、自然とアイスラ人と出会う機会は減る。


 万が一、自分たちの子供が、他国の人間と恋をして、結婚でもしようものなら、その子は本当に、大切な医療魔法を覚えられなくなってしまう。


 貴族たちは、自分の血筋が薄れるのを、何よりも恐れる。


 ゆえに、よほどのことでもない限り、他国の医者はグストと同じような薬草と知識から出来る、一般人が賄っていることが多い。


 もっとも、中央国家であるライストは別物らしいが。