さて、一度話しを整理すると、グストの村で事件が起こったのはちょうど一年前の出来事だった。


 そして、その間ララはどこにいたかというと、フーガ国へ、診療所の医者として出向いていた。


 医者はアイスラ国の特権みたいなものであり、どこの国にも医者は必要。


 優秀なアイスラ人ほど、他国にいるものである。


 つまり、彼女はグストの村で起こった事件を知らなければ、あのとき家にはいなかったのだ。


「そう・・・そんなことが起こっていたの・・・全然、知らなかった。」


 一年前の事件を説明する。


 その間、彼女の明るい顔は見る見るうちに暗くなっていた。


「知らなかった・・・で済ませられる問題ではないんだ。少なくとも俺にとってはな。」


 目を瞑ると未だに思い出す・・・甥の亡骸にすがる、姉と姉の旦那。


 倒れたまま、息絶える父と母・・・倒れていく、村の仲間たち。


 叫び、恐怖、悲壮・・・・。


 もし、地獄がこの世界にあるとしたら、あのときの、あの村のことを指すのだろう。