「グスト?おい、グスト?」


 リンが、グストのおかしな様子を察したのか、袖を引っ張るが耳に入ってこない。


「あいつが、いるというコトは、当主も来ているのか?」


 だったら、わざわざアイスラに帰る必要はない。


 ここで引導を渡してくれる。


 腕が震える。


 ダメだ、我慢しろ。あいつはララ。アイスブランド家の中では立場の低い、ただの長女だ。


 あいつを殺すのは、当主の次・・・アイツの母親と兄を殺した後だ。


 しかし・・・。


「あ!やっぱりグストだ、久しぶり!元気だった?」


 ララは自分の顔を見ると、パァと明るい顔になってこちらに近づいてきた。


 ちっ!気付かれた。相変わらず、記憶力だけはいい女だ。


「あぁ、元気だよ。お前たちを殺すまで、簡単に死ねるものか?」


 誤魔化したところで通用しないだろうから、開き直った。


 貴族相手だからといって、引けを取るわけには行かない。


 そもそも、コイツは俺の家族の敵。


 許すものか。


「なんだ?グスト、知り合いか?また、えらい美人と知り合いだな。もしかして彼女ってヤツか?」


 とりあえず、リンの言葉は無視だ。


 まったく、せっかくの敵とあったと言うのに、子供連れとは格好が付かないにもほどがある。


 だいたい、彼女だと?そんな言葉があるなら、彼女はその対極にいる女だ。