「・・・まったく、水掛け論だな。分かったよ。俺の見込み違いだっというコトにしておいてやる。とりあえずはな。」


 とりあえずでも、なんでもなく、見込み違いだ。


 英雄は、簡単には現れはしない。


 だからこその英雄だ。


「分かってくれたら、それでいい。行くぞリン。」


 立ち上がり、リンの腕を引っ張る。


「あ、うん。わかった。次はどこに行くんだ?」


「道すがら、考える。」


 そんなやり取りをしながら、ホテルの出口に向かうと・・・


「おぃ、グスト!」


 ギリギリで、ラグストールに声をかけられた。


 まだ、話があるのか?


「本当に、勇者と会えたら、俺に連絡をくれよな。いつでも力になるから。」


 あぁ、分かったよ。本当に会えたらな。


 馬鹿馬鹿しいと思いながらも、否定したら、また話がこじれるので、話半分で返事をしておいた。


 英雄には世界の危機がつき物である。


 しかし、今のグストにはそれを見ることは出来ない。


 魔王の復活か、それとも別の何かが・・・。


 どちらにしても、旅の終わりを迎えようとしているグストには関係のない話だった。