「大変だったぞ。お前さんの治療中、ずっと泣き喚いていた。邪魔だから部屋に行くようにと言ったのに、その場から一歩も動かないのでな・・・どうやら、疲れて、寝てしまったらしい。わしもさっき気がついたがの。」


 そういうと、ドクターはよっこらせと、リンの身体を持ち上げる。


 その表情は孫を抱える老人そのもの。


 そんなにリンが可愛いなら、どうして、朝引き取るのを断ったのか、疑問に思えてくる。


「・・・なぁ、お前さん、本当にこの子を施設に預けるのか?」


 ・・・そういうことか。


「どういう意味だ?」


 なんとなく、察していたが、あえて聞いてみた。


「・・・・・・いや、子供はいいものだよ。わしの子供は戦争で亡くなってしまったがの。」


 言いながら、ドクターは、リンを自分の真横に寝かせる。


 どうして、ここに?とたずねたら、起きたとき、お前さんが傍にいたほうがいいからな。とよく分からない答えをされた。


 まったく・・・。


「俺の旅の目的は、復讐だ。」


 ましてや、復讐相手は貴族さま。


 復讐を果たした後、間違いなく俺は殺されるだろう。


 そんな旅に子供なんて連れて行けるか?


「・・・・・悲しい人生だな。」


 なんとでも言え。