最初、グストはこのドクターにリンを預けられればと考えた。
しかし、その申し出をドクターはやんわりと断った。
「詳しい事情は知らないが、その娘はお前さんと一緒にいたほうが良い。あの子が一緒なら、お前もそのポケットに入っているものを、うかつには使えまい。」
見抜かれていたのか・・・。
恐れ入る。
「俺は、コイツを求め、こいつを使うために旅をしていたんだ。今さら、後には引けないさ。」
隠す必要もないと思い、ドーラで手に入れた拳銃を取り出す。
「・・・そうか・・・だが、どちらにしても家では引き取れんよ。多くの人が死んでいく病院は、子供を育てるには余りに不適切な環境じゃ。私だってあと何年生きてるか分かったものではないしな。」
・・・・そうか。
少し、残念だったが、そういわれてしまっては仕方がない。
グストとリンは、ドクターにお礼を述べると、昨日の治療代と薬代をもらい、病院を後にした。
とりあえず、ドクターに聞いた孤児院の場所に向かうとしよう。
「なぁ、グスト。あれじゃないのか?劇場って。」
途中、リンが何か珍しいものを見つけたと声をかけてきた。
そこにあったのは、まばらな人だかりと、燃えカスとなった劇場跡。
そして、それを片付ける憲兵たちの姿。