「・・・・そうか、うらやましいな。」


 心から出た言葉。


「お前さんは、どこかで何かをやらかした口か?」


 そうだった。ライストに暮らしているとはいえ、彼もアイスラの民なのだ。


 自分以上に頭が切れてもおかしくはない。


「旅の途中でな・・・。憲兵が押さえに来るのも時間の問題だろう。」


「・・・そうか。」


 しかし、ドクターは深くは追求しなかった。


 恩義からか、気まぐれか。


 それとも、リンの存在があったからか。


 どちらにしても、今のグストにはありがたかった。


「終わったか?」


 コイツは・・・。


「ああ、終わったよ。それよりもだな、お前、フォークとスプーンの使い方を教えただろう。スパゲッティを手で食うな、手が汚れて・・・あ~あ、今日買ったばかりの服が・・・」


「だって、これめんどくさい。」


「そういう問題ではない。いいから!」


 グストは立ち上がり、リンの後ろに着くと、フォークとスプーンを無理やり持たせ、こうやるんだ・・・と、指導を始める。


 リンの身長や体格を考えると、おおよそ10歳前後。


 ドワーフに育てられたというコトや様々なことを考慮して、12歳と言ったところだろうか。


 だとしたら、彼女はあまりに幼い。


 果たして、コレだけの不躾な子供を引き取ってくれるものが現れるのか、正直、不安になってくる。


「本当に、仲がいい二人組みじゃな。どれ、もう夜も遅い、今日はここに泊まっていきなさい。子供を連れてこんな夜遅くに宿を探すのも大変だろ?」


 ドクターのありがたい申し出。


「すまない。恩に着る。」


 遠慮する材料はどこにもなかった。