「がっつくな、リン。」


「だって、お前のせいで私はお昼飯を食べてないんだぞ。それに、ここに来る間、ろくなものを食べてないじゃないか?」


 分かってるよ。


 だけど、遠慮というものをだな・・・。


「ハッハハ・・・かまわんよ。子供は元気が一番だ。」


 それを見ながら、笑い声を上げるドクター。


「すまない。躾をする時間もなかったものでな。」


 とりあえず、申し訳なくあやまっておいた。


「気にするな。それより、見事な腕前だったな。どこかの医者だったのか?」


 いや・・・。


「俺は魔法も使えないただの平民だ。」


 医療は魔法を使える、使えないでその差は雲泥に広がる。


 所詮、グストが治療できるのは、軽症患者までなのだ。


 薬草と、人間の手だけでは限界があるのが、今の医療技術。


「だとしたら、もったいないな。それだけの才能がありながら・・・。」


 ・・・・・・・・・。


「関係ないだろう?才能なんてものは?」


 厳しい身分制度。


 魔法と呼ばれる絶対的な力。


 たとえ、いくら剣に優れたファイアル剣士であろうと、所詮、魔法の使えるファイアルの貴族には勝てない。


 そういうものなのだ。


 どれだけ、医療の才能があろうと、グストは魔法が使えない。


 だから、医者にはなれない。


 身分制度のゆるい、フーガがうらやましいとは思うが、自分が歌って踊れるかと考えると、そんな自分を想像することすらできなかった。