「しかし、俺は庶民で、魔法なんてものは一切・・・」


 一応、断りの言葉を入れてみたが・・・


「今は少しでも人手が欲しいのです!」


「・・・・・分かったよ。」


 看護師に言い寄られ、しぶしぶ中に入ることにした。


 瞬間・・・。


「なんだ、これは?」


 言葉を発したのは、グストではなくリンの方。


 そう。この中には、20人のけが人が倒れていた。


 うめきながら、のたうちまう人の群れ。


 そして、それを眺めながら、大騒ぎするおそらく患者の家族と思われる人たち。


 その光景は、15年前・・・あの戦争を思い出す光景。


 むろん、そのときに比べると、20人とざっと数えられるだけ、小規模であることは確かなのだが。


「・・・・・・火事?」


 全ての人が、やけどを覆っているところからの判断。


「・・・・・はい、詳しい話は後ほど。」


 看護師がそういうので、グストは、上着を脱ぎ、持ち歩いていたカバンを看護師に渡す。


 そして・・・。


「とりあえず、家族は邪魔だ。外に追い出せ、そして、リンお湯を沸かせ。釜の使い方は分かるな?」


 聞かれて、リンは黙ってクビを縦に振る。