「分かったよ。とにかく監視なんだろう?俺は歩くぞ。着いてこなくて良いのか?」


 正直、水の民であるグストにとって、土の精霊がどこの英雄だろうと知ったことではなかった。


 どうせ山を抜けるまでの辛抱。


 こいつ一人付くだけで、山を歩けるというなら、困ったことではない。


「私は監視役、お前の後ろに付く。」


 ああ、そうかい。とだけ、返事をして再び山を歩き始めるグスト。


 リンは、何を言うでもなくグストの後をついていった。


 二人は黙々と歩き続けた。


 そこに会話はなく、目を合わせることすらなかった。


 しかし、リンは一度も地面にもぐるというコトをせずに、なおかつ、この太陽の中を平然と顔を背けることなく歩いていた。


 普通、ドワーフは太陽の光を嫌うはずなのにな・・・。


 ・・・・・・・まぁ、そういうことなのだろう。


 再びグストは、空を見上げる。


 日が傾いてきている。


 山を越えるのは、明日になるだろう。