「・・・人間が、こんなところになんのようだ?」
見つからなければ、一番だと思ったが、さすがは『地下の民。』
山に足を踏み入れた途端、足音で存在がばれた。
グストは、地面から顔半分だけを出してこちらを睨むドワーフを前に足を止める。
「この山を抜けたいだけだ。見逃して欲しい。」
アイスラの民は力に欠ける。
ファイアルの民ならば、彼らが何人来ようと、その力で押し破っていくだろう。
だが、グストは、学問の国の出身者。
たとえ、相手が怪力しか脳のないドワーフだったとしても、まともに遣り合ったら、勝てる保証はない。
「・・・・・・・ここは、我らの土地だ。汚すな。」
「通り過ぎるだけだ。何もしない。」
両手を挙げて、降参のポーズを取る。
こういうときに、下手に敵対心を見せてはいけない。
幸い、ドワーフはモンスターの中でも、比較的言葉が通じる連中だ。
竜の巣だったら、こうは行かないだろう。