「使い方は、身体で覚えろ。学者ならすぐだろう?」
ああ、そこまでは大丈夫だ。
グストは、銃をポケットにしまうと、引き出しに入っていた、弾丸だと思える弾をもてるだけカバンに詰める。
「感謝する。代金はいくらだ?」
「死に行くものに、金を払うのか?お前は?」
それもそうだ。
「金を払わなければ、物取りと一緒だ。」
「変わらねぇよ。毒が用意されて、銃がなくなりゃ、真っ先にお前が浮かび上がる。憲兵に見つかるのも時間の問題だろう?」
確かに。
「脱出ルートのめぼしは付いているさ。」
「はっ、頭のいいヤツはコレだからいやだね。」
ごもっとも。
「それが、アイスラの誇りだ。」
自然を汚してでも、科学を極めようとするのが、ドーラの誇りというなら、いかにずる賢いといわれようと、知識を振る活用するのが、アイスラの誇りだ。
「勝手にしな。」
「そうさせてもらう。感謝しよう。」
言うと、グストは、出せるだけの金貨をここに置き、バカスの家を後にした。
彼がその後、どうなったかは分からないが、おそらくは死んだのだろう。
「まったく・・・少しでもやわらかい頭を持っていれば、もう少し長生きできたものを。」
バカスの家を後にし、グストは誰に言うでもなく、ぼやいていた。