「それが、この武器の力だ。凄いだろう?」
「あぁ、凄いな・・・俺にも使わせてくれよ。」
言うと思ったよ。
「ダメだ。ギル、この武器は俺にしか使えない。」
もちろん、そんなことはなかったが、逆にグストからこの武器を奪ったら、彼には何も残らないのだ。
ギルやララのような便利な魔法も、リンのような人間離れした怪力も、グストは持ってない・・・。
「なんだぁ、それがあれば、俺も・・・。」
俺も・・・強くなれる・・・か・・・?
「焦るな、お前にはお前にしか出来ないことがある。」
勇者ギル。
その言葉をまともに信用することは出来ない。
だけど、もしコイツが勇者だというなら、きっと・・・彼にしか出来ないことがあるのだ。
いや・・・それは勇者に限った話ではない。
人は誰だって、その人にしか出来ないことがある。
そういう意味では・・・きっと、この世界は勇者で溢れているのかもしれないな。
「ところで、この鳥どうするんだ?私としてはダナ・・・」
「あぁ、任せろ、俺が料理してやろう。」
これでも肉料理は得意だぞ。
「ララ、お願いだ!!絶対にグストにだけは渡すな!!」
必死の形相で、鳥の死体を持ってララに近づくリン。
おぃ、何が言いたい。
「はいはい。任せて、鳥鍋にしましょう。また果物か何かを取ってきて頂戴。」
お~い・・・。
張り切って食べ物を探しに行くギルとリン。
それを、ただ呆然とグストは見ることしか出来なかった。
・・・そこまで信用ないですか?俺は・・・。


